2012年 07月 24日
イタズラ |
娘が明方帰ってきた。バーにいたのではなかったと聞いて驚いた。なんと夜通し卒業したばかりの学校にいたのだという。そうか、今日はアビ・ストライクだったのだ。
ドイツのギムナジウムの伝統である。アビと呼ばれる卒業試験=大学入試に合格した学生に、一日学校を占拠する特権が与えられる。その日は一切授業はなし。何も知らずに登校してきた下級生たちは、歓声をあげながら家に帰ってゆく。
その前夜祭として娘たちは深夜の校内で狼藉を尽くしてきたのである。曰く、職員室に忍び込んで先生が使うハサミをセロテープでぐるぐる巻にする。誰かが食べ残したパンをラジエーターの裏に隠して冬になり暖房が入ったら腐るようにセットする。学校中のドアのノブにチューインガムを貼り付けて歩く。
19、20歳のお兄さんお姉さん方が、いったいなんと幼稚な真似をと飽きれながら、同時に僕は胸をつかれてもいる。彼らはそんな風に振舞うことで、子供の時代に別れを告げているのである。明日から、もう二度とそこへは戻れないことを、誰よりも彼ら自身が知っているのだ。
それにしても、普段は偏執的にまで規則に厳しいドイツの大人社会が、人生のこういう節目に示す意外な鷹揚さに僕はぐっと痺れるのである。
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by foryoureyes
| 2012-07-24 19:00