2011年 01月 14日
影の同伴者 |
今回のフィレンツェ旅行には実は影の同伴者がいた。
ほぼ一年前、私は娘と親友のTとでこの街を訪れたのだった。
三人で礼拝堂のフレスコ画を鑑賞し、娘は古道具屋で古着やガラス細工を、そして製本屋では皮職人から手製のノートを買った。Tはそのすべてに快く付き合ってくれた。そのときの思い出がよほど愉しかったからこそ、娘は今回の旅行にも二つ返事で乗ってきたのである。フィレンツェで彼女が何よりもしたかったのは、一年前に歩いた同じ道のりを辿ってみることだった。
去年の夏日本に家族で里帰りをしたとき、Tはなにを思ったのか、娘にライカとローライのカメラをプレゼントした。両方とも10年ほどまえにTがミュンヘンへ遊びに来たときの土産として買い求めたもので、ライカは推定年齢約60年のパルナック型である。秋には日本の高校留学やミュンヘンの学校での演劇で忙しかった娘は、今回の旅で初めてそのふたつを試す機会を得たのである。フィルムの装填からして一仕事なのだったが、17歳の娘がフィレンツェの街角で戦前のライカを構える姿はなかなか絵になっていた。そのシャッターの一押しごとに、我々は傍らにTの気配を懐かしく感じるのであった。
by foryoureyes
| 2011-01-14 04:50