2010年 03月 07日
ミュンヘンの空に満つ・・・ |
先週の中2に続いて、今週は中1のクラスで詩の授業を行った。
こちらは少女ばかり五人のクラスである。先生は一学期は毎回一時間を費やして詩を書かせたという。二学期はその時間が作文に変わったのだそうだ。
「どっちが好きだった?」と聞くと、全員、詩の方が好きだと云う。「自由に書けるから」
たまたま英訳を手配していた三好達治の定型詩「ことのねたつな」を持ってゆく。まずはテキストを黙読してもらう。もちろんなんだか分からない。つぎに口に出して読んで貰う。すると五・七のリズムが見つかる。リズムに乗って読んでゆくうちに、すこしずつ意味がせり上がってくる。私自身が外国の詩に接するときに味わう醍醐味に極めて近い歓びを、少女たちが味わっているのが分かる。
ことねたつな
いとけなきなれがをゆびに
かいならすねはつたなけれ
そらにみつやまとことうた
ひとふしのしらべはさやけ
つまづきつとだえつするを
おいらくのちちはききつつ
いはれなきなみだをおぼゆ
かかるひのあさなあさなや
もののふはよものいくさを
たたかはすときとはいへど
そらにみつやまとのくにに
おとめらのことのねたつな
最後は数行ずつ覚えて、みんなで輪唱をした。空に満つ、やまとならぬミュンヘンに、乙女らの声による琴の音が響く。外ではしんしんと雪が降りしきっていた。その奥処から、三好達治氏が目を細め耳を澄ましているように思えるのだった。
by foryoureyes
| 2010-03-07 22:44