2010年 01月 23日
読書日記 |
ダンテ『神曲』の連獄篇を読み始める。「地獄」巡りの時と同じように、ペンギン版の英訳とレクラム文庫の独訳を照らし合わせながら、本文を読み、注釈を辿る。フィレンツェの街を飾る美の水平世界に打ちこまれた、信と真の垂直軸。この読書を当面の生活の中心に据えようと思う。
森有正『バビロンの流れのほとりにて』をほぼ30年ぶりに読み返す。つまりその間、氏の著作はもっぱら『砂漠に向かって』以降のものばかり読んでいたわけだ。『バビロン・・・』は思想家としての森有正の出発点である。ここにはまだフランスに着いたばかりの、40才になるかならないかの森有正がいる。冒頭近く、初めてパリからフィレンツェをおとずれた際の記述がある。
「いくつかの小路を曲がっていくと、突然、照明されたドゥオモの前に出た。青や白の大理石が規則正しくつみ重なり、それが縦に大きく三つに区分されて、三つの切妻をかぶった入口、真中の高いところと、左右の中ほどに深くはめこまれた薔薇窓、上段には、列王の像が並んでいる。右手に、ジョットーの作った四角い高い塔、その大きさとともにその全体の結構の均整のとれた美しさ。僕はこれを見た瞬間、フィレンツェ人がどういう人間で、何をよろこんでいたか分かったようなに思った。」
夜、目を閉じて横になっていると、闇のかなたから小さなスプーンが現れる。静かな衝撃を受ける。
by foryoureyes
| 2010-01-23 13:16