2010年 01月 04日
昆布飴の冬 |
暮れにお歳暮が届いた。Express Air Mailで、日本からである。自慢じゃないがこの四半世紀、お歳暮にもお中元にも縁のない暮らしを送ってきた。封をあけると昆布飴なるものが現れた。昆布を基調に、梅、レモン、チョコの三種類。すぐにピンときた。「梅昆布飴の夏」なる傑作を書いた詩人、田中庸介からだ。
この作品が収録されている『スウィートな群青の夢』は、ここ数年で私がもっとも衝撃を受けた詩集だった。すぐに「びーぐる」に書評を書いて、この詩集を日本現代詩の新基準として採用するなどと宣言した。その後、ドナルド・キーン賞受賞の気鋭の翻訳家ジェフリー・アングル氏に英訳を依頼し、このほどポエトリー・インターナショナルに掲載が叶ったのである(2010年1月1日付け)。その紹介エッセーにも「梅昆布飴の夏」を取り上げた。「お歳暮」は田中庸介氏の洒落である。ちなみに氏は細胞生物学者である。
昆布飴は実に複雑な味である。家族みんな口にした途端、神妙な顔になっていた。だが田中氏の詩の味わいはもっと奥が深い。日本語で初めて読んだときそう思ったが、英語で読み返していっそうその思いを強くした。この詩集が昨年の賞を総嘗めにし、詩檀の話題を独占しなかったのが不思議でならない。みんななにを読んでいるのだろう。
by foryoureyes
| 2010-01-04 06:58