2009年 10月 28日
東からの呼び声 |
来月11月9日はベルリンの壁が崩壊してからちょうど20年目。
その関連の特集を組む文芸誌「すばる」に、詩の現場における壁の崩壊のインパクトに関するエッセイを書いたのだが、その校了がおわった今朝、奇遇にも旧東側から三つのメールが届いていた。
ひとつはマケドニアの若手詩人ニコラから。彼はEUが主催する詩の新人賞を受賞して、一年間ベルリンの作家レジデンスで過ごす権利を得たという。来月ミュンヘンに遊びに行くから会っていっぱいやろよという誘いのメールである。ニコラと初めて会ったのはもう五年ほど前のマケドニア詩祭。彼はその後ぼくの詩をマケドニア語に訳して彼の地の文芸誌に発表してくれた。それにしてもベルリンは積極的に旧東側の作家を招聘して、いまやヨーロッパの文化的首都となった。そこには当然政治の要素があるだろうが、ニコラのような若い作家にとっては有難い話に違いない。
ふたつめは旧東独、ライプチッヒから朗読会の誘い。ちょうど一年前の今頃にも呼ばれていったのだが、その後この地方の文芸誌でぼくの詩のドイツ語訳をかなりまとめて載せてくれた。今回は12月初旬、ワイン畑に数十人の若い書き手を集めてワークショップを開くという。バッカスの宴になるのだろうか。
みっつめはサラエボの若い友人セルマから。今年の夏にサラエボ大学の英文科を卒業し、その後仕事を探していたのだが、高校の英語教師の職がみつかったとの知らせ。実は「すばる」のエッセイにも彼女のことを書いたところだったのでびっくりする。ちなみに彼女の卒業論文はJohn Donne. 論文が届いたのも、ちょうど僕がDonneの翻訳を発表した直後だった。サラエボ大学文学部の学生たちは、ぼくが大学生だったころの、控えめにいっても100倍は勉強している。以前彼女が見せてくれた教科書は、ペンギン版の英詩アンソロジーの分厚いやつだったが、いたるところに付箋が張られていて、ぼろぼろになるまで読み込まれていた。
by foryoureyes
| 2009-10-28 13:53